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2009年4月24日 (金)

咬傷(つよぽん医学講座その3)

前回「刺し傷」の記事を書いてそれなりに好評だったので
今回はその延長線上で「咬傷(こうしょう)」の話をします。
動物などに噛まれた(咬まれた)傷のことです。

傷、キズ、と言っても怪我の原因はいろいろですよね。
刃物で刺したキズ、カッターで切ったキズ、
転んで擦りむいて擦過傷、動物に咬まれたキズ。

刺したキズも化膿しやすいんだけど、
動物に咬まれたキズ(動物咬傷)もコワイのです。
野良じゃなくペットの飼い犬、飼い猫であっても
動物の口の中には雑菌がいっぱいです。

「咬まれた傷はヤバイ」ってこと、
一般の人々は意外と知らないんじゃないかと思います。
犬や猫に噛まれた傷で病院に来た患者に
「動物に噛まれた傷は化膿しやすいんですよ。」
と話をしても「ええ!?そうなんですか??」
みたいなリアクションが多いのです。

動物に咬まれて出血するようなキズを負ったなら
見た目に軽傷そうでも、すぐに医者にかかってください。
咬まれた部位にもよりますが、できれば整形外科へ。
病院に行ってみて実はホントに軽傷だったとしても
大げさな対応をしておいて悪いことはありません。
軽く見て化膿して、あとで大変になるよりはずっといい。

鋭い歯が深く刺さったキズならなおさら危険です。
汚染された刺し傷」と「咬傷」、
化膿しやすい傷の条件がダブルでそろってますから。

で、そういう患者が病院に来たら?
まずキズをよーく消毒したり洗浄したりします。
で、抗生物質入りの軟膏を塗ってガーゼ保護。
抗生剤の点滴か内服。初期治療はそれだけです。
肉がみえているようなキズでも原則として縫いません。
開放創にしておいたほうが菌を閉じこめず
化膿を防げるからです。

ちなみに、どんな動物の咬み傷が感染しやすいか?
Evidenceを確認したわけじゃないのですが
「ヒト咬傷」がタチ悪いというのはよく聞きます。
人間の口の中って雑菌だらけなんですね〜(^^;)
「傷なんて舐めておけば治る」なんて言うのは
実は言語道断ってことかもしれませんw

ちょっとズレますが、
ケンカで人を殴って相手の歯に当たって拳に傷がつき、
ついた傷がひどく化膿したのを診ることがあります。
噛んだんじゃないけど、歯に当たってついた傷、
咬傷と同じだから化膿しやすいってことですね。

Photo

で、写真はちょっと古い症例ですが
ネコに手を噛まれて受傷した高齢男性の放置例です。
関節まで達する傷だったんだろうと思います。
傷が広がって骨まで見えるようになってから
他院からの紹介で病院に来ました。
私が診たときにはすでに骨髄炎、化膿性関節炎で
関節軟骨と周囲組織が溶けて膿が出ていました。
即入院してもらって、手術室でデブリドマン
(感染、壊死組織を洗浄や切除してきれいにすること)、
創管理と抗生剤点滴をガッツリやって数週間後…
最終的には関節固定術(関節を動かなくしてしまう手術)。
そうして関節をひとつ犠牲にして感染は落ち着きました。
後遺症を残して“治癒”です。

そのときの膿、
培養検査(ばい菌を調べる検査)してみたら
帰ってきた報告書に記載されていた菌種名は
Prevotella denticola
あんまり聞き慣れない名前だなーと思って調べたら…

“歯周病菌”ですた。うむむ。

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つよぽん医学講座」カテゴリの記事

コメント

つよぽん先生、いつもコミュのほうで拝見しております。

猫の咬傷の症例、かなりすごいことになってますね。ところで猫を飼ってました時に、咬むよりひっかくほうが頻度的には多いなあと思っていたのですが、咬まれたときと引っかかれたときでは事態の深刻さは同じでしょうか違ってきますでしょうか? 口内のほうが細菌が多いのかなあとも思ったり、でも猫は排泄物に手で砂をかけたりしますので爪もかなりの汚染度かなあと思ったり。。。皮膚にぐさぐさっと深く爪を刺された時もあったので、あの時はもしや病院に行くべきだったんじゃないだろうかと今になって考えています。

投稿: いよぴー | 2009年4月24日 (金) 09時37分

 咬創・刺創では原則縫合しないというのは当然ですが、顔面などどうしても縫った方が美容的予後がよい場合にはナイロン糸ドレナージが極めて有効だと思います。

http://www.wound-treatment.jp/next/case/case999.htm

 すでに100例以上経験がありますが、現在のところ蜂窩織炎に至った症例は0例です。また消毒は一切せず、洗浄と抗生剤投与のみにしています。

投稿: 僻地外科医 | 2009年4月24日 (金) 09時58分

ホントに甘く見てはいけませんよね・・・。

もっと早く受診していればこんなに治癒までに時間かからなかったのにっていう症例はいやって言うほど見ていますから・・・。

ひどくなってからうちの形成外科によく回ってきます。
開放創、生食洗浄もしくは微温湯洗浄、抗菌剤投与ですね。

余談ですが・・・
糖尿病性壊疽もかなりひどくなってからいらっしゃいますね・・・
痛くないので臭いがひどくなってからの受診というケースが多いです。

投稿: かんちゃん | 2009年4月24日 (金) 10時42分

これわー、MP関節の化膿性関節炎だから、たぶん相手は猫じゃないですよね。
この年でストリートファイトは無いでしょうから、婆さんにDVして反撃に噛まれたんじゃないかな(^^;。医者相手には体裁悪いから「猫に噛まれた」んでしょう、きっと。

いよいよ明日から中原ボールペン作戦開始です。よろしくお願いいたします。

投稿: moto-tclinic | 2009年4月24日 (金) 21時27分

うひ~shock。怖いけど勉強になりますぅ。

投稿: ひなた | 2009年4月25日 (土) 16時36分

人や動物の口の中の雑菌が傷口に入ると怖いんですね。

家にペットいないので気にしていませんでした。
参考にします。(  ̄^ ̄)ゞラジャ

投稿: 茶壺 | 2009年4月25日 (土) 20時36分

お久しぶりです。最愛の母へのBlog運営者です。
実は、今年の三月母が急死し、あのBlogは一時休止の状態とし・・・。
そのうち、私の方が腹水が溜まるようになってしまい。本来、つよぽん先生なら主治医に話しなさいとおっしゃる事は分かりながら、身近に人間のお医者様がいないので、医師になんと話せば良いか、相談に乗っていただけますか。
以前、ブログにメールアドレスを書いてただいたようですが、なぜか文字化けして送れなかったので、お時間が許す時によろしくお願い致します。
ここのブログは管理人のみ閲覧の機能がないので、詳細はメールにてお話しします。

投稿: 旅人 | 2009年4月26日 (日) 13時55分

>いよぴーさん

爪か牙か、と聞かれれば牙(歯)のほうが危険そうな気がします。
爪で“ひっかかれた”だけならキズは浅だろうから
さほどリスクはないんじゃないかと思いますが
ぐさぐさっと深く爪が刺さったキズならヤバいかもしれませんね。

>僻地外科医さん

ナイロン糸ドレナージですか、紹介ありがとうございます。
顔面の場合は顔のどの部分かにもよりますがときどき悩みますね。
要はドレナージが効いているかどうかである、というのにすごく同意です。

投稿: つよぽん | 2009年4月27日 (月) 03時35分

>かんちゃん

「もっと早く受診していれば…」
そういうのって咬傷に限らず、キズに限らず
いろんなケガや病気でありますよね。
糖尿病性壊疽もそうだねー。

> moto-tclinicさん

じーさんも家族も「ネコ」って言ってましたが、もしかして?ww
深く牙が入ったんだなーと私は納得しちゃってました(-_-;)

中原ボールペン作戦、スタートしましたね。
よろしくお願いいたします。
私は会報とボールペン発送のお手伝いをしてきました。
ブログ記事もアップしましたが、
またあとでそちらにもコメント書きに行きまーす!

投稿: つよぽん | 2009年4月27日 (月) 09時31分

>ひなたさん

うひひ、もっと怖いネタはたくさんありますぜ〜Ψ(`∀´)Ψ
あんまり怖いのは自粛して出しませんけどw

>茶壺さん

はい、参考にしてください♪
ペットだけじゃなく人間も注意ですよ。ガウ!!w

>旅人さん

うーん、個別の相談には残念ながら対応できません。


投稿: つよぽん | 2009年4月27日 (月) 13時14分

昔、プレーリードッグに噛まれてかなりの出血をしたのを思い出しました。怖いんですね( Д) ゚ ゚気をつけなきゃ。。。

投稿: まな | 2009年5月12日 (火) 21時40分

>まなさん

見た目の出血よりばい菌が怖いんですよΨ(`∀´)Ψ

投稿: つよぽん@当直明け | 2009年5月13日 (水) 19時55分

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