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2009年1月

2009年1月23日 (金)

汚染された刺し傷(つよぽん医学講座その2)

つい先日の手術。
 
【現病歴】
2週間ほど前に木材のトゲが母指(親指)に刺さった。
自分でトゲを抜いて、あとはそのまま放置していたら
だんだん指が腫れて痛くなってきた。
○月○日、開業の整形外科からの紹介で当科を初診。
 
【現症】
右母指が通常の2倍ほどに腫れ上がり、
IP関節中心に血行の悪い皮膚色、周辺はびまん性に発赤。
関節を動かすと強い痛みを訴える。体温は38℃超。
血液検査ではCRP,WBCが上昇している。
 
【診断】
右手のびまん性の感染を伴う化膿性屈筋腱鞘炎
 
【手術】
まず…母指の掌側(指の腹)いちばん腫れている部分に
サクッとメスを入れる。一気にドロドロの膿が流れ出してきた。
膿を採取して培養、細菌検査に提出して手術は続行。
指の先端からMP関節より近位まで大きくジグザグに切開し
指神経を温存してよけ、腱と腱鞘の汚染を確認する。
軟部組織は想像以上に汚染されていた。
指の背側をグッと押すと裏側、伸筋腱側に回り込んで
溜まっていた膿が更に押し出されてドロッっと出てくる。
滅菌した生理食塩水トータル3000mlで洗浄。
ドレナージが効くように、あまり密には縫わずに閉創。
 
術後はガッチリ抗生物質を点滴で投与する予定。
 
「ちょっとした刺し傷」を甘く見た結果がオオゴトになった。
そういうエピソードです。実はこういうの多いんです。
1


 
話は変わって…
年末に某SNSの医療系コミュニティで上がった相談。
 
 使用後の折れた爪楊枝で指を刺してしまった。
 化膿が怖いので絞り出すようにして血を出して
 マキロンで消毒してカットバンを貼った。
 …1日経って…だんたん指が腫れてきた。
 スジがつるような感じ、そして熱っぽさも出てきた。
 でも、この程度の傷で病院へ行くのは気が引ける。
 このまま消毒のみで様子をみて大丈夫でしょうか?
 
どう答えましょう?
 
上に紹介した患者さんの経過を想像してください。
この相談に対する回答は『すぐ病院へ!』です。
 
以下、この相談に対して私が書いたコメントです。
(読みやすくするために多少表現を変えます。)
 
 本来は受傷後すぐに病院に行くべきでしたね。
 まず外科系の二次救急をやっている病院に電話。
 怪我の経過を話して受診したいとお願いしてください。
 指のどのへんのどれくらいのキズかわかりませんが、
 書き込みを読んだ限りでは感染(化膿)がひどくなって
 いきそうな印象です。しっかりした創処理、創処置と
 抗生剤の処方または点滴を受けたほうがヨサゲですよ。

  
相談者は回答を受けて救急病院に診察依頼の電話をしました。
そしたら、その病院の対応は…
患者がたくさん来ていていつ診察できるかわからないので、
明日まで待って休日診療に行くように指示された、とのこと。
 
それを読んだ私のコメント↓
 
 確信犯的に、あえて声を大にして言いたいんですけど
 
 >患者さんがたくさん来られていて
 >いつ診察できるかわからないので、
 >明日まで待って休日診療に行くように指示
  
 医者か看護師か受付の事務かわかりませんが、
 対応として“最低”です。
 私が当直医なら「すぐ来てください。」と言いますね。
 どこですか、その病院! annoy
  
 感染が広がっていたら処置がオオゴトになります。
 脅すようですが最悪なら緊急入院&手術です。
 例えば指の屈筋腱の腱鞘内にキズが貫通していたら、
 腱鞘は腱が通るトンネルですから
 トンネル内を一気に菌が広がります。
 そしたら手のひらから指までざっくり切って開いて洗浄、
 そんな手術、私は年にいくつもやってます。
 そういったケースのほとんどが
 「大したキズじゃない」と素人判断して病院に行かずに
 中途半端な消毒で治療開始が遅れたものです。
  
 昨日の午後や、今日の日中、
 病院が通常業務の時間に受診しなかったのは感心しませんが
 どの程度の怪我なら病院に行くべきか判断できなかったのは仕方がない。
 「こういう怪我したらすぐ病院にくるもんですよ。」と救急外来で
 当直医からちょっと小言を言われるかもしれませんが…
  
 『 す ぐ 病 院 へ 』
  
 が現時点での最も適切な行動です。
  
 傷口が広くて浅い傷は比較的感染しにくいです。
 血液と一緒に菌が流れて外に出て行きますから。
 小さく深い傷口はすぐにふさがってしまい
 菌が外に逃げられないから中へと広がり繁殖します。
 要するに“刺し傷”って化膿しやすいんです。
 で、その上、何で刺したかと言ったら…
 洗ったばかりのきれいな包丁で切った、とかじゃなく
 買ってすぐの取り出したばかりの爪楊枝、でもなく
 ディスポーザーの中の使った後の爪楊枝、ですよね。
  
 感染→化膿の条件が満たされちゃってるんですよねぇ…。

  
 
… 
 
長々と(ぃゃホント長文スマソ)ここまで読んでくれた方々には
『汚染された刺し傷』の怖さを分かってもらえたと思います。
医学知識のない一般の人々で『刺し傷はおっかない』
なんて認識を持っている人は少ないですよね、たぶん。
刺したキズなんて押さえておけば血はすぐ止まるし、
どう見ても重症感はありません。
コンビニ受診の弊害がメディアでも叫ばれる昨今、
そういう刺し傷を負った人が、初期治療が大事なのに
「これくらいで病院に行ったら大げさと思われるかな…。」
受診を躊躇う人が多くても不思議ではないですよね。
 
今日のブログ記事、テーマがふたつ混ざっているので
ややこしくてすみません。
 
ひとつは
・汚染された刺し傷の緊急性、危険性を知ってほしい。
という純粋に医学的な啓蒙、「つよぽん医学講座」です。
 
もうひとつは
・救急医療において必ずしも緊急度=重症度ではない。
ということを医療者にも非医療者にも考えてほしいのです。
こちらのテーマについて詳しく書くのは次回にします。

ぃゃ、文が長くなって疲れちゃったんで。
読むほうも疲れたでしょ?coldsweats01

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2009年1月14日 (水)

止まらない40時間はこんな感じで (当直実況中継 その6)

実況中継しませんでしたが実は当直明けのつよぽんです。

いつものことですがほぼノンストップの40時間連続労働を終え…
切れ目のない40時間の連続勤務、労働の様子を1行垂れ流しで
わざと句読点やスペースのない文章で表現してみました。

はい、どぞっ!w

昨日は朝8時の病棟業務から始まってフツーにお仕事の1日を過ごし通常業務が終わったあと当直入りして救急車もけっこう来たけどコンビニ受診系がかなーり多くてプッツン切れそうになりながらも爆発しないように感情を押さえてにこやかに対応したりそうでなかったりで夜は更けていって深夜帯には1時間おきくらいに患者が来て眠れず最後は早朝にCPA(cardiopulmonary arrest=心肺停止)が運ばれてきて当直が明ける間際にバタバタしつつ朝8時半をまたぐ展開になりそのまま途切れなくいつもの外来に突入してその外来が終わって昼メシ食った後に手術室に行こうとしたら急患の診察依頼が2件来たので受けて診察して1人は手関節の骨折で入院させてからやっと遅れて手術室入りしてもう始まっていた1件の手術は助手をしてもう1件は橈骨遠位端骨折と尺骨茎状突起骨折の手術を執刀していつものように終わったその場で手術記録をチャチャッと書いたあとに病棟にあがって何人か入院患者のところに診察と話をしに行ってオペ患の術後指示も出し終わってやっと医局の自分の机に戻ったら書類がどっちゃり積み上げられていたけど当直明けで寝不足の疲労MAXなので放置プレイにして帰っちゃおうと思ったけど考え直してここは勢いだぁ〜と入院総括を4冊と自賠責その他の診断書を17枚書き上げて今23時半です。お腹がすきました。そろそろ帰ります。あっ…看護学校講義の試験問題を作らなきゃいけないんだった、明日までに…(-_-;)

私が死んだら過労死認定をお願いします(笑)

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