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2008年8月15日 (金)

8.9 夏期研修会 その3(メディアからの提言)

夏期研修会レポート その3…
うぅ、このペースで行くとレポートが終わらん…orz
とばします。
 
第1部、3人の演者の2人目はメディア側からの登場です。
真々田弘氏は、日本テレビNEWS ZEROのドキュメンタリー、
ACTIONで医療の特集番組を制作している方です。
 
おもむろに、ゆっくりと噛みしめるようにしゃべりはじめました。
今の時代、講演と言えばスライド、パワーポイント…。
講演の導入部、話のどこからスライドが登場するかと思ったら登場せずw
テレビ界の人間なのに、あえてvisualのデバイスは使わずに
どんどん“語り”だけで講演を進め、聴衆を惹きつけていく。
そんな講演でした。
 
真々田さんの話は、ブログで伝えるなら私というフィルターを
最小限にしたほうがよいと思う。なるべくそのまま伝えたい。
ブログ上の文字で伝えようとする私の「医師の視点」が
「メディアの視点」をゆがめちゃいけない。
 
…そう思うのであって、編集を手抜きする言い訳じゃないよーんw
 
ではどぞ↓  …長文スマソ
 
 
日本電波ニュース社報道部 真々田弘氏
 
実は私、医療問題をずっと追いかけてきた記者ではありません。1989年来、テレビの世界でロシア・ソビエトの取材をしてました。ゴルバチョフ、クレムリン…当時の支局の記者たちはそちらを向いていた。私はクレムリンではなく、人々の暮らしの視点で番組を作ってきました。核のボタンの前に座る将校たちと一晩ウォッカを飲み、工場労働者とジャガイモ畑を耕し、ゴルバチョフの執務室のお掃除おばちゃんの生活を取材し…。取材の出発点は現場だと思ってます。
 
そういうスタンスで、医療問題にはド素人、アウトサイダーだった私たちがこの1年間医療を追いかけました。その中でしようとしたこと、そしてその結果見えてきたこと…お伝えできればと思います。
 
なぜ医療をやることになったか?ニュースゼロのプロデューサーから…「医療が旬になってきているから取材してみてくれない?」これが去年の6月。それまでは医療の取材を提案しても蹴られてきた。同時に、医療現場が取材に対し敷居が高かったことも一因。スーパードクターの取材なら病院サイドも喜んで受けるけど、疲れている医師の取材、崩壊の現場は取材を許してもらいにくい。
 
さて、取材。どうしましょ。局にも我々にもアイデアがあるわけじゃない。ならば取りあえず気になった現場に飛び込んでみよう…と最初に行ったのが内科医6人が一斉退職した病院でした。事務長は尊大な医者に困っていたり、医者を守るために救急外来を制限しようとすれば議会や住民が敵に回る。医療費抑制についても調べた。行政改革を掲げた市長が院長室に怒鳴り込んで頭ごなしに叱ってる、それが患者にも聞こえる。患者は「院長先生かわいそう…。」と言う。そんな姿を見ていたら、そりゃ医者は逃げ出します。ああ、そんなこともあるのか、いろいろ見えてきた。実はこれ、まだ放送できてないんですよね(笑)。
(だったら書いちゃヤバイかな…by弱気なつよぽん(-_-;))
 
そうこうしているうちに局側が「一年間かけて“医療”をやるぞ。」突然決まった。テーマを定めて取材をすれば上等なのかもしれないけど、自由な発想でものを見れなくなる。自分たちで現場を見つけて入っていこう…。予算の問題もある、行き当たりばったりになるかもしれない。それでも、その姿勢は堅持しようと決めました。
 
ZEROでは著明な医師や学会のお偉いさんのインタビューをVTRで使ったことがないんです。あくまで現場。そういう目で見てきたら…よくぞこんな過酷な現場で頑張ってるな、と思うようになった。「徹底的に医療者の目線でとらえよう、作っていこう。」ありきたりな目で医療現場を見てきたスタッフの見方が、そう変化した。
 
普通は「視聴者目線で捉え、作る。」のがテレビ番組制作のセオリー。医療者目線でやると視聴者から反発が来るかな…と思ったらスタジオで言い訳をすればいいや…ということに。局側も最初は、医療者目線だけでは困るぞ、というスタンスでした。でも出来上がったVTRを見ると、現場の過酷さを誤魔化しちゃいかん、という気持ちになってくる。視聴者目線を入れようと言っていた局側が…放送が進むにつれて、それを言わなくなってきた。
 
たとえば3月に放送された救急の問題。「たらい回し」という表現を使うまい。医療現場では受け入れたくとも受け入れられない。それが現実です。医療者の立場なら「受け入れ不能」というコトバを使う。でも患者目線で見たら「たらい回されている」わけで、それも現実かもしれない。きちんと使い分けよう、そういう風にしました。
 
コンビニ受診の問題を取り上げたときも、患者側からクレームが来るんじゃないかと思った。でも局にクレームは来ませんでした。なーんだ、ちゃんと伝えればわかってもらえるんじゃん。
 
先日やったばかりの産科の訴訟の番組。まさに“難産”でした。放送の直前までmeetingで構成変え、編集変えが続きました。医療ってそんなに完全なものじゃない。産科医療崩壊の第2回「医療と訴訟」。台本が11回書き換わり、編集は7回やってます。そのたびに大激論でした。
 
放送前夜の夜中…チーフプロデューサーが言った。「わかった。医療と裁判って相性悪いんだね。」見ちゃった知っちゃった医療現場の事実を伝え、認識を変えていく作業でした。医療者目線を取ったことで、医療者からの番組の信頼は高くなった。意外だったことは視聴者からの反応も非常によかったこと。「知らなかった。もっと知りたい。もっと伝えて欲しい。」明らかに、視聴者は医療現場の生の声を聞きたがっています。
 
潮目が変わってきている…。
 
小泉政権時代、国の医療政策を批判しようと思った企画を蹴られてきた私からすれば嬉しい状況が生まれてきた。同時に…今あなたがた医療者が発する言葉を視聴者は待っているんだと思います。
 
医療特集、今は年間計画の折り返し地点。現場に行かない局の人たちも取材の報告を聞き、映像を見る中で「ホントに医者はがんばってる、なんとかしなくちゃいけない。」そういう気持ちになってきている。次は、医療をどうやって守っていったらいいのか、変えていったらいいのか、これからの医療を提言したいよね、という段階です。だけど…。
 
柏原、東金、夕張。各地で新しい動きは始まっている。それを取材すれば何か見えてくる?いや、見えない気がします。なぜか?医療者の集団…というものが取材する側に見えてこないからです。個々ががんばっている姿しか見えてこない。学会?日本医師会?違う…。勤務医の声は拾えていない。誰の声を聞いたらいいのかわからない。医師たち…その集団としてのまとまりのなさに情けなさを感じます。
 
医療はどんどん悪くなっている。それをちゃんと伝えてこなかった自分たちは“マスゴミ”と言われても仕方がない。それは痛感している。それじゃ医療者は何をしてきた?伝えてきた?知恵を集めた?提言してきた?あなた方医者も…なにもしてない。
 
4月12日、医療議連のシンポジウムで壇上の医師が「医療が崩壊してゆく中で、あなたは何をしてました?」と質問され、その医師は答えました。「患者を診てました。」あ、上手いこと言うなぁ、と僕は思った。思ったんだけど、じっくり考えてみると実はそれ、逃げ口上なんじゃない?我々も「何やってたんだ?」と聞かれたら「1日24時間ずっと必至で番組を作ってました。」と答えればよい?それでは責任を果たせない。
 
今がチャンスなのかもしれない。メディアの人間も変わりつつあります。医療の世界の敷居の高さも変わってきた。開かれてきた。開かれるのなら我々はずうずうしく入っていきます。“総意”を出してほしい。そうすれば今の我々ならそれを支えていけると思う。
 
言いたいことは以上です。が、大野事件について付け加えるなら…。
 
事件について正しいかどうか、僕はそれを言える立場にはない。しかし報道についてはまた大きな過ちを犯していると思います。逮捕された時点で実名で報道している。無罪推定が働いていない。メディアが実名を出した瞬間に逮捕者には社会的制裁がはじまってしまう。その家族も逮捕された人の家族だと見られる。事件事故報道は匿名であるべきだと思う。視聴者の好奇心におもねるため、記者がドラマを描きやすくするために実名を出すのは止めなければなりません。

 
 
 
医療現場、前線の整形外科医である私の視点と真々田さんの視点は違うはずです。で、やっぱり多少違います(汗)。違って当たり前です、立っている位置が違うんだから。でも共感?共鳴?しました、“違うこと”を前提に。私が取材する側だったら、と想像したら…私も同じ事を言うかもしれない?いえ、真々田さんほどに医療者目線で番組を作れるだろうか?我々医療者はもっともっとメディア側の人たちと、ぶつかり合う、語り合う、理解し合うべきだと思いました。潮目が変わってきているのは、我々医師たちも肌で感じています。
 
 
 
褒め倒すだけじゃ気持ち悪いので、ひとつ暴露w
 
講演を聴いて後日、私は真々田さんに…
「スライドも使わずに語りだけで惹きつける…すばらしかったです。」
そしたら真々田さん曰く
「“スライド使わず”ではなく“スライド作れず”です。すみません。」
だそうで…。あれ〜?…(^^;)

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コメント

真々田さん部分の逐語記録、素晴らしいです!
私は少し斜めから見る自分が確かに存在していたので
こうしてそのままを振り返ることができるのが貴重です。

投稿: みんみん | 2008年8月15日 (金) 01時43分

立ち位置が異なる発言をすりあわせる中で、
見えてくるものもありますよね。

素人のつたない感想にも一片の意味があると信じて、
これからも伝えていくことにします。

投稿: 蝸牛 | 2008年8月15日 (金) 10時18分

>みんみんさん

ブログに書こう、と思ったとき迷ったんですよね。
研修会会場にいなかった人に伝えるなら…主観で書くか、客観で書くか。
「違う視点から医療を捉える」というコンセプトに忠実になるなら
そっくりそのまま、私が余計な味付けをせずに見せたい。
そう思いました。それでよかったと思います。

>蝸牛さん

医療者目線にもメディア目線にも視聴者目線にも
それぞれのアドバンテージがあるんでしょうね。
蝸牛さんが素人かどうか、は置いといて(笑)
医療者にもメディアにも手の届きにくいこと、
素人目線の感想でなければ伝わりにくいもの、
素人のコトバでなければ伝わりにくい場所、ありますよね。

投稿: つよぽん | 2008年8月15日 (金) 11時16分

つよぽんセンセ,お疲れ様です.
夏期研修会レポート,ありがとうございます.
私も行きたかったのですが,無理でした.
7月(学会のため実質3週間)は手術が24件.外科医3人,麻酔科不在,救急医不在(外科が肩代わり)の我が病院では限界に近い数字です.
8月20日も行きたいのですが,無理そうです.
また,レポートよろしくです.

投稿: 田舎の一般外科医 | 2008年8月15日 (金) 12時43分

しゅばらしいです~(;;)。。。。
真々田さまの発表はステキでしたね!
声がいいし。

投稿: 僻地の産科医 | 2008年8月15日 (金) 13時40分

真々田さんの講演を生で聞いている様な臨場感がありました。
たしかに微妙な目線の差はあります。
しかしここまで理解してもらえる、という事は一般の人にも理解してもらえる、という「希望」がありますね。

投稿: マリス | 2008年8月15日 (金) 20時03分

ところで、この方は、この講演を原稿なしでここまで語られたのですか?

投稿: 優柔不断 | 2008年8月16日 (土) 13時01分

>ところで、この方は、この講演を原稿なしでここまで
>語られたのですか?

本人弁。
一応、原稿は作ったんですけれど、長すぎたし、書き言葉っていうのは「語り言葉」とは違うんで、ま、一応の筋書きは書いて、あとは現場任せ・・・・
現場で、医療者の苦しい姿、見てますから。
後は、言葉、出てきますよ。

>つよぽん様

ありがとうございます。
生きている場所が違う。目線の違いは当然ある。
それを理解していただいたうえで、私に(もしかしたら「毒」になるかもしれない私に)語る場を与えていただいたのだと思っています。
だから、ボクも、取材で感じている、これから作ってゆくうえで、どうしたらいいんだ!っていう言葉を発することが出来たのだと思います。

ぼくはマスゴミはマスゴミだと思ってます。
でも、ボクに出来る仕事はモノを作ること、伝えることしかないと、思ってます。
ゴミにまぎれながら、自分をゴミとしないように戦っているメディアの人間は、実はたくさんいるのです。

会話は可能です。
それを信じて欲しい。


投稿: 真々田弘 | 2008年8月16日 (土) 14時15分

マスコミの方の生の声を聞けて(読ませてもらって)、よかったです。
つよぽん先生、こんなに長文文字にするの大変ですね。お疲れ様です。
8/20、私も無罪を信じてます^^

投稿: Kei☆ | 2008年8月16日 (土) 17時11分

つよぽん先生、ありがとうございます。
読み終わったとき、涙が出ていました。
ちゃんと報道しようとしてくれている人たちがいるんだって。

真々田さん達の今のような報道の形になるまでにはずいぶん重圧・プレッシャー・圧力などあっただろうに・・・と毎回拝見しています。

私たち医療従事者には何ができるだろう・・・
現場で勤務する医師や看護師の思いをどうやって理解してもらったらいいんだろう・・・
って考えてしまいます。

投稿: かんちゃん | 2008年8月16日 (土) 22時03分

自分がしゃべった言葉が、どう伝わって行くのだろう。
でも、理解してくれた人たちがいた。
ありがたいことです。

>みんみん様、蝸牛様、田舎の一般外科医様、僻地の産科医様、マリス様、優柔不断様、kei☆様、かんちゃん様

ありがとうございます。
一緒に、考えてゆきましょう。
いえ、一緒に考えさせてください。

投稿: 真々田弘 | 2008年8月17日 (日) 08時35分

レポートありがとうございました。

潮目が良い方向であるのは望ましいですが、まだまだ周知徹底にはいたっていないのが現実でしょう。

投稿: ♪う♪ | 2008年8月17日 (日) 23時37分

初書き込み拙文お許し下さい。
福島事件、様々なニュース時間のある限り
見て疑問感じてました。
最後に、拝見させていただいて
皆様 ありがとうございます。
一国民として拙いながら伝えていく事頑張ります。

投稿: tanuki | 2008年8月21日 (木) 01時25分

>田舎の一般外科医さん
ちょっとご無沙汰でしたm(_ _)m
そちらも超忙しそうですね。こっちもっす。
8月20日のレポートも10日も過ぎてやっと書いて
コメントも今ごろですんません。

>僻地の産科医さん
真々田さんの声、と言うか話し方が私も好きですね〜。
ゆっくり一文一文を区切って間(ま)を置く
噛みしめるような話し方でしたね。

>マリスさん
一緒に考えてもらえる、そう思えました。
マリスさん登場は本チャンのこの講演のあとでしたね。

…といったところに御本人が降臨ww

>真々田さん
こちらこそです。
我々から提供できるものもたくさんあると思います。
ぜひ、一緒に考える仲間でいてください。

>Kei☆さん
うえーん、わかってもらえましたか…(T_T)
いやホント、長文を文字に落としていくのは作業大変なんっす。
でも真々田さんの語りは一文一文が主語述語、
しっかりしていて比較的やりやすかったです。

>かんちゃん
涙が…?うん、なかなか理解してもらえない現状で
こういう話をしてもらっちゃったりすると
グッときちゃっちゃったりしますよね、ホントに。

>♪う♪さん
潮目…大野事件判決をまたいでコメントの返信を書いている今…
今の今の時点で考えると、やっぱり現実はまだまだなんだと
思い知らされます。
事件の報道を見ると…まだ何も変わっちゃいない。

>tanukiさん
疑問を見つけて、考えて、そして伝える。
私も頑張ります。

投稿: つよぽん@日直疲れたorz | 2008年8月31日 (日) 21時15分

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